着いた先はもちろん病院だ。
しかし、ベッドの近くの椅子に腰掛けていたのは、母親ではなく…
若い綺麗な女だった。
「あの…どちら様ですか?」
鈴のような綺麗な声で、綺麗な笑みで笑う。
「そ、その…俺たちは「息子です。姫島浩介の息子です。」
兄貴は、はっきりと言い切った。
「まぁ…。わたくしは八瀬愛理と申します。」
八瀬さんは、悲しげに微笑んだ。
「浩介さんは、病気なんですか?」
兄貴は少し、いい肉そうに唇を噛む。俺はそんなこと知らない。
いつの間にか親父は、家からいなくなっていて、母親に愛人のところに行ったんだと聞かされただけだった。
「一週間前、突然、わたくしのところへ来て、余生は君と過ごしたいなんておっしゃって…。それまでの間何をしてたかさえ知らされてないもので。」
「…お袋の、実家で奉公です。お袋との離婚を許してもらうための。」
…母親の家で奉公…?
つまり、愛人と結婚するために、母親の家で奉公したってか?
俺たちのこと考えてなかったのかよ…。
両親が離婚って思いの外、すっげーさみしくて、辛いのに。
「…浩介さん…。わたくしのためにそこまでしてくださったのですね。でも…。息子さんのことをよく考えてくださいと言ったではありませんか…」
そう、一言、悲しそうに言った。


