ダメだ、考えても考えても分からない…。



人差し指を、そっと唇の上に乗せる。



ただ、分かってるのは…。



重ねた唇がビックリするほど冷たかったこと。



頬を何度も往復した繊細で細長い指も、冷たかった。



あの、唇を重ねた一瞬。私は明王寺さんの心の中を覗いてしまった気がする。



世界的な財閥のトップに君臨していて、誰もがハッとする美貌も持っていて。



だけど、満たされない。何かが足りない。



寂しい。寂しい。



そんな気持ちが、唇から、指先から伝わってきた…。