ある日の花屋の、バイト中の事だった。

珍しく大学生の男の子二人が、恥ずかしそうにやってきた。

「こんにちわ~」

「はい、いらっしゃいませ」

「あのピンクのバラ8本で、花束って作れます か?」

「かしこまりました」

きちんと指定してくれると、やりやすい。

あとは渡す側が、どんなふうに渡すのかをイメージして花束を作る。

状況や想いや、相手の喜ぶ顔だとか。

話をしながら、リサーチする。

「お誕生日か何か?」

「いえ、今から告白するんです」

「えっ?本当に??」

「はい。8本のバラを無限大と見立てて。運命を感じた女の子に、僕の永遠の愛を受け止めてもらうって訳です」

私は、緊張する男の子に言った。

「そんな大切な事に、お手伝いできて光栄です。で、無限大って何?」

私は不思議そうに聞きながら、バラを組む。

友人の男の子が、机に指で描く。

「無限大のマークは、こう∞書くんですけど。縦にすると、数字の8になるんですよ」

「へぇ~、良いこと聞いた☆」

「他にも8って数字は末広がりとか、一つの輪が二つに繋がってるから円満だとか、終わりのない永遠の繋がり、だとか言われているんですよ」

「知らなかった~☆」

数字に弱い私は、全くそんなモンに、今まで興味も湧かなかった。

終わりのない永遠の繋がり…か。

「何ぞかんぞで、あやかりたいんだよな?」

「そうそう、あやかりたい」

「なるほどね☆」