あんたみたいになれたら、ラクだけど。

私は流れ落ちる涙を、何度も拭っていた。

するとスッと長い腕が、私に伸びてきた。

私はまた、腕を掴まれるのかと思って、避けようとした。

が、掴まれたのは私自身だった。

突然、流は私を抱き締める。

「えっ、ちょっと...」

何してんの、コイツ。

私は、うろたえながら流を見る。

流は何も言わないで、ただ静かに目を閉じていた。

毒々しくて強引で、嫌がらせしてくるような最低最悪の、ネジ曲がった性格の流。

なのに柔らかく、優しく、温かい体温で私を包むのだ。

流の胸の鼓動の音を聴いて、それに合わせて呼吸をすると、涙が止まった。

何だろう。

私も自然と目を閉じて、流の大きな胸に顔を埋めてしまった。

見知らぬ男に抱き締められて、

「......」

嫌じゃない自分がいた。

落ち着く自分がいた。