杉原流も、ずっと強く掴んでいた私の腕を勢いよく離した。

「明日もなぁ、精々イタブッてやるよ、クソガキ!」

何か、自分のさわりを知られたからなのか。

隠すかのように捨てセリフを吐いて、自転車に股がり、急いで私の前から立ち去って行った。

私は痛くなった腕を擦りながら、その後ろ姿を見ていた。

杉原流。

一体、私が何をした。

意味分かんない奴。

しかしながら、翌朝もコイツは相変わらず一人で喫茶店に来て、堂々と当たり前のように座っている。

コイツには近寄らないようにして、避けているのに。

コーヒーを入れて、運んでやったのは今日は私。

コイツのタイミングに腹が立つ。

一切無視。

言葉すらも私には掛けてこない。

だから、余計にまた私は腹が立つ。

帰った後のアイツのテーブルにはまた置いてあった。

「マズイ」

の、一言が書かれたコースター。

私は深く溜め息をついて、コースターをエプロンのポケットにしまう。

捨てればいいのに...。

私もバカみたい。