そして、そのまま流は黙ったまま車を走らせた。
たどり着いた先は、以前よく過ごしたホテルだ。

「えっ、流?ちょっと...」
「いいんだ...」

流は私の手を引っ張って、部屋まで足を進めていく。

「流ってば!また、奥さん悲しませるの?あなたは帰る場所があるんだから、こんなことはもう…」

流は私の手を掴んだまま、部屋の明かりを消した。
と、同時に私をベッドへと強く押し倒した。

「聞いてってば、流!あなたの奥さんがあんな強攻策に出たのは、私が花屋であなたの奥さんにアドバイスしたから!だから私がつらい思いをするのは当たり前なの。幸せになってもらいたいから、何も知らずにアドバイスした。でも、そう思った事には変わりない...」

本当はうそ!嫉妬で苦しくて、自分が惨めになって腹が立って、泣くしかなくて。
街行く流に似た若い父親が子どもを抱いている姿を見ると、私はもう本当に自分がどうにかなってしまいそうなくらい。

つらくて…。
その光景は私にはトラウマになってしまった。

だから、絶対に結婚して子どもなんて産まない!

私はそう思ったの。
何度も何度も...。
そこに幸せを、私は求めないって。

分かる?…この気持ち?

流はどんどん私を愛撫しながら脱がしていく。
「好きだ、笑...愛してる...」
呪文を唱えるように流は何度も言う。
私の話、全然聞こえてないの?
「流の幸せも私は壊したくないの...忘れたいの...」

愛してるから。

「そんな言葉は信じない」
「違う...」
「違わない!」

流の愛撫は荒い息とともに、激しさを増していく。

流は自分の最後のシャツをおもむろに脱ぎ捨てて、白く透き通るような肌を見せた。

その時、とっさに私は言った。

「流。あなたはそう言いながらも結局、奥さんと別れられないんでしょ」

「笑、おまえはどうなんだ?」
「見たの?」
「あぁ、見た。男と住んでいただなんて俺は今日始めて知った。思い出すと嫉妬で頭の中がおかしくなる...」

流は私とまた同じ事を考えていた。
嫉妬だ。
その言葉に驚いた。

気が付けば、流も私も裸の姿。
心も身体も、私たちはもう丸裸になっていた。

「ごめんね、流。私も騙してたわけじゃなくて、でももうきちんとあの彼氏とは別れる事になったの。一緒に住んで答えが出たから。
流がどうこうじゃなくて、自分自身で決めたの…」