流は携帯電話なんて、そっちのけでキスを続けるけれど。

あのさ、私のが気になっちゃってる。

一度切れて、また鳴り響く。

「流、電話出て...。気になるから」

流は黙ってズボンのポケットから携帯電話を取り出す。

液晶を見て、また同じ表情をする。

そしてやっぱり、

「悪い、少しだけ待ってて...」

「うん...」

流は離れた場所で話はじめる。

浮かない表情。

それは私も同じ。

本当は凄く忙しいのかな。

昔、女同士の話でよく聞いてた事。

携帯電話が頻繁に鳴る男は、本当は遊んでる奴。

34歳で遊んでる奴いるんかい?

軽い男?...あんな見た目からして無愛想で、明らかに軽いとは思えない流。

性格も歪んでるから、顔でモテたとしても中身は最悪だからな。

普通の女の子なら、とっくに傷付いて泣いて逃げてるよ。

ボロカスだからね、流の口調は。

...何なんだろう。

お家が大変で忙しいのかな。

「ごめん、笑」

「うん、もういいの?」

不安なのが私の顔でバレたのか、

「次は電源切っとく。ごめんな笑」

「いいの、いいの」

キス...いいとこだったんだけどな。

ま、いっか。

流は、その後すぐに帰って行った。

最近、こうやっていつも携帯電話で邪魔される。

電話の相手は一体、誰なんだろう。

実は、他にも女が居たりして...。

流の裏の顔?…まさかね。

絶対こんな奴と付き合っていけるのは、世の中で私くらいしかいない。

流に愛されるのは、この世で私だけ。

なんて、思いながらも...。