吸血鬼の眠る部屋

 


「きゅう…けつき…」


頭の中で何度か反芻してみるが、ファンタジック過ぎて上手く理解できない。


確か、ニンニクが駄目なんだっけ?


それに十字架も。


狼みたいな鋭い牙があって、人間の首筋に噛みついて血を吸って――。


そこまで思い出して、寒気がした。




どうしよう。


冷や汗が流れる。


死ぬことを想像することはあった。


でも、殺されることを想定したことはなかった。


手が震えてきたけれど、空を飛んでいるこの状況では彼から離れることはできない。


「あ、の。わたし、殺されるの…?」


緊張で声が上擦った。




わたしの心情とは裏腹に、青年は事も無げに答える。


「仲間を殺すわけないだろ」


当たり前のような口調で。