吸血鬼の眠る部屋

 


深夜2時になって、やっと少年がクラブの外に出た。


「行くぞ」


蒼がわたしに目配せをしてから、少年の後を追って歩いていく。


「は、はい」


わたしも慌ててテーブルから立ち上がった。


少年を尾行するのだ。




宵春と美月はクラブに残っている。


宵春は少年に顔を覚えられただろうから、尾行は出来ない。


タイミングを見計らって二人に連絡をして、合流してから『狩り』をする。


そんなふうに蒼と宵春が決めたのだった。




少年は、露出過多な少女と一緒に人通りの多い夜道を歩いていた。


仲睦まじく腕を組んで、陽気な声でお喋りをして。


彼女なのかもしれない。


「一人になるまで手は出せないな」


「…ですね」


少年少女の背中を見つめながら、気持ちが重くなっていくのを感じる。


あの少年が死んだら、あの娘はきっと泣くのだろう。


その痛みがどんなものか――想像したくない。