吸血鬼の眠る部屋

 


沈黙が飽和する。


「…………」


その間も、美月は低く頭を下げ続けている。




はあー。


演技くさい大袈裟な素振りで息を深く吐き、じりじりとした時間を壊したのは宵春だった。


「――蒼。もうこれ止めんのムリじゃん?」


「宵春!」


「女の子同士がタッグ組んだら、俺らには止められないって。連れてこーよ」


「あのな…」


「ぶちギレて勝手に狩りに行かれるよりは、俺らと一緒にいてくれたほうが安全でしょー」


「それは……」


蒼は続く言葉を見つけられず、押し黙る。


「つーわけで、明日の狩りに備えて今日はしっかり寝とくこと。あんだすたん?」


宵春に微笑まれて、美月が素直に頷いた。




蒼は自分の額に手のひらを押し当て、不機嫌さよりも諦めの強い表情をつくる。


「ったく」


そしてなぜかこちらを睨むから、わたしはビクッと肩を震わせてしまった。


「――お前ら、いつの間に仲良くなったんだ?」


「え」


仲良く?


わたしと美月が?