吸血鬼の眠る部屋

 


美月は唇を噛み締め、小さな体を震わせる。


見開かれた瞳がわずかに潤んだ。


「あたしが人間と吸血鬼のハーフだから、駄目だって言うの…?」


「ああ」


蒼は残酷なほど冷静に頷く。




「ねえ、美月」


それまで喋らずにいた宵春が、声をかけた。


「僕らはただ心配なだけなんだよ。もし、なにかあったらと思うと――」


「……」


「意地悪で言ってるわけじゃないんだよ。わかってるよね?」


「……」


美月は宵春に応えず、優しい声音を拒絶するように背中を向ける。




わたしには美月の気持ちがわかるような気がした。


周りの人ができていることをできず、ただ守られてぬくぬくと生きるのは、幸福で贅沢だけれど辛い。


病弱な人間としての生活の中で、わたしはいつもそんな気持ちに苛まれていた。


不安、焦り、そして――劣等感。


今の彼女が抱えているだろうそれらは、以前のわたしも抱えていたものだ。