わたしは宵春を見た。
目が合うと、彼は困ったように笑って唇に人差し指を寄せる。
『黙って見守っていろ』と言うことだ。
「咲夜子だって狩りに行ってるじゃない。咲夜子にできるなら、あたしだって」
急に名前を出されて、わたしは唾を飲み込んだ。
気にしていない風を装って手元に目をやり、コーヒー豆を蒸らし過ぎていたことに気づく。
ああ、これは失敗だ。
「咲夜子は関係ないだろ」
「あたしだって吸血鬼なのにっ」
蒼の溜め息が聞こえた。
「お前は純血の吸血鬼じゃない」
蒼は事実をありのまま、諭すように言う。
「弱い奴は連れていけない。わかってるだろ、美月」