吸血鬼の眠る部屋

 


涙を拭き、林から出る。


美月はベンチに座ったまま、ぼんやりと空を見上げていた。


彼女のカップアイスはすでに空になっている。


「猫、触れなかったなあ」


わたしは美月の隣に腰掛けながら、できるだけ明るい声で言った。


「……」


美月はちらりとわたしを見て、また空に視線を移す。




半分ほど溶けてしまっていたバニラアイスを空にして、公園を出た。


アパートまでの坂を下っていく。


足を踏み出すたびに揺れる美月の小さな背中を眺めながら歩いた。




「――帰ったらご飯作るの?」


黙っていると泣いてしまいそうで、そんな自分を誤魔化すために話題を探した。


美月が頷く。


「あの、…手伝わせてくれる?」


「……なんでよ」


「一人より二人のほうが、楽かと思って…」


「――別に。好きにすれば」


「うん」


何かをしていれば、きっと気が紛れる。


きっと。