吸血鬼の眠る部屋

 


どうしよう…?


ガサガサと音を立て、日宇良さんは歩いていく。


小さくなっていくその姿が、涙でぐにゃりと歪んで見えた。




わたしはまだ狩りができない。


日宇良さんの元に戻れば、再び体が弱まっていくだろう。


ベッドに横たわったまま何もできず、日宇良さんに世話をしてもらって。


死ぬこともなく、ずっと迷惑をかけるだけで。


でも戻らなければ、健康な体で生きていけるのだ。


日宇良さんに迷惑をかけることもない。


だから。


だから――。




木々の中に日宇良さんの姿が消える。


「――――あ、ひうら…さ」


泣きながら名前を呟いた。


揺らめく葉の音に溶けてしまうような、小さな小さな声で。