吸血鬼の眠る部屋

 


突然、園内の茂みから小さな影が飛び出してきた。


「あ、猫!」


わたしは声を上げ、ベンチから立ち上がる。


その声のせいで、美月はビクッと体を震わせた。




灰色の毛をした猫だ。


ふくよかな体型と赤い首輪で、飼われているのだとわかる。


飼い猫ならばきっと人慣れしているだろう、もしかしたら触らせてくれるかもしれない。


アイスをベンチに置き、ワクワクしながら猫に歩み寄ってみる。


園内に設置された明かりの下で、猫の大きな瞳がわたしを見た。




「あっ」


次の瞬間、猫は素早い動きで林に駆け込んでしまった。


警戒させてしまったらしい。


思わず追い掛けるわたし。


美月はベンチから離れずに黙々とアイスを食べていた。