吸血鬼の眠る部屋

 


スーパーを出たわたしたちは、帰り道の途中にある公園に足を踏み入れた。


並んでベンチに座り、ビニール袋から買ったばかりのカップアイスを取り出す。


「アイスは溶けるから」


そう言って公園で食べることを提案したのは、美月だった。


わたしはバニラ味。


美月はチョコレート味だ。




入り口の反対側はたくさんの木が生えて、林のようになっている。


今は暗く鬱蒼として見えるが、日のある時間は子供がかくれんぼなんかをしているんだろう。


太陽の光が懐かしい。


少し、感傷的な気分になる。


「美月はよくここで食べるの?」


「……たまに」


「そうなんだ」


「冬は肉まん…」


笑ってしまいそうになる。


あまり表情を出さず、目を合わせず、会話も難しく、敵意すら感じることもあるのに。


木のスティックでアイスを口に運ぶ彼女は、妙に可愛らしく見えるのだ。