吸血鬼の眠る部屋

 


「あ、カゴはわたしが…」


入り口でカゴを手にした美月に言うと、やっとわたしに目を向ける。


「わたしが持つ…よ?」


美月は迷うように視線を動かし、数秒後にカゴをわたしに渡した。




わたしは美月の後にくっついて歩く。


美月はわたしが持つカゴに商品を入れていく。


野菜、肉、魚、お茶や牛乳、歯みがき粉、洗剤の詰め替えパック。


蒼の煙草と、宵春が食べたがっていた新発売のグミ。


人間と何も変わらない、普通の買い物だ。




「――あんたは?」


「え?」


「欲しいもの、ないの?」


「え!」


ちょっとビックリしてしまった。


「じゃあ……あの、アイスとか…」


夏だから、アイス。


単純な思考回路だ。