外に出ると蝉の声が大きくなった。
「あっつい…ねえ?」
「……」
わたしの前をスタスタと歩いていく美月にそう言ったけれど、返事はない。
思わず出そうになった溜め息を堪える。
緩やかな坂道を登る。
丘の上の雰囲気は、飲み屋の通りやシュエットの通りとは違った。
一軒家の住宅が並び、噴水のある公園があり、本屋や花屋、個人病院もある。
丘の上と下では住人の層が違うのだと思った。
それが金銭的な違いなのか、違うものなのか、わたしにはわからないけれど。
やがて美月の背中越しに、大きな看板をつけたスーパーが見えてきた。
『当店は24時間営業です!』と書かれたのぼりが店の前に置かれている。
「あ、ここなんだ」
美月はやはり答えない。
無言のまま、自動ドアを潜っていった。
