吸血鬼の眠る部屋

 


湿気を孕んだ空気が肌にまとわりつく。


部屋の窓を開けると、金色に輝く月がぽっかりと浮かんでいる。


「――あっつい」


ジージー…ジリジリジリジリ……。


夜だというのに蝉の声が聞こえる。


もう夏なのだ。




わたしが見張りとして参加してから、4回目の狩りの日。


「じゃ、お仕事行ってくるねー」


玄関の前で、宵春が美月のオカッパ頭をよしよしと撫でる。


美月は俯いて口を尖らせていた。


「なーんで機嫌わるいの?」


「……」


「みっつきー?」


「……」


「一人で留守番すんの嫌?」


美月はきゅっと唇を噛む。




ふうーっと蒼が溜め息を吐いた。


「――今日は俺と宵春で行く。咲夜子は残れ」


「えっ」


わたしは思わず声を出してしまった。


美月はたぶん蒼と宵春に一緒にいて欲しいのだ。


わたしではない。


「二人で買い出し行ってこい」


「気が向いたらご飯つくっといてね」


そう言い残して、蒼と宵春はさっさと外に出ていってしまった。