「さて、なにを飲みます?」
仕事の話が終わると、マスターは喫茶店の店主としての仕事に戻る。
「いつもの」
「僕もー」
青と宵春はメニューも見ずに注文したから、わたしは慌てて表に目を落とした。
「――せっかく女性がいらしたのに、怖がらせるような話はしたくないんですが」
わたしの前に湯気の立つカップが置かれる。
アッサムミルクティだ。
「悪い情報が入っていますよ」
宵春の前には、ココアパウダーがのったカプチーノが置かれる。
「先日、この町で吸血鬼が殺されました」
カチッと音を立てて、蒼の前にエスプレッソが置かれた。
宵春が身を乗り出す。
「殺された? 吸血鬼が?」
「ええ。清められた銀のナイフで心臓を貫かれて」
「犯人は?」
「わかりません。――だから、気をつけてください」
