吸血鬼の眠る部屋

 


それから30分ほど経った。


「お待たせー」


ビルに挟まれた隙間から、宵春が出てくる。


血液の入った瓶を持ち、何事もなかったかのように笑って。


彼も蒼と同じく、慣れきっているんだろう。




暗闇の先が見えなくてよかった。


何も見えなくて、よかった。




蒼は煙草を灰皿に投げ入れ、はあーと息を吐く。


「遅い」


「そーお? いつも通りじゃん」


「だからいつも遅いって言ってるだろ」


「はいはい、ごめんなさいねー。…んじゃまあ、報告に行きますか」


「ああ」


報告ってなんだろう?


首を傾げたわたしの肩を、蒼の手がぐっと掴んだ。


「え、あの…?」


「店に着くまでくっついてろ」


蒼が持つ傘の下に、引き込まれる。