わたしはビルの壁に寄りかかり、地面を見つめた。
蒼は少し離れた場所に備え付けられた灰皿の前で、煙草を吸っている。
あの男性は今頃恐怖の中にいるのだろうか?
それとも恐怖を感じる間もなく殺されるのだろうか?
宵春はどんな表情で殺人を犯すのだろう?
いつもの笑顔を崩さないまま、殺すのだろうか?
――考えるのを止めたいのに、止まらない。
「怖いか?」
蒼が白い煙を吐き出しながら、ぽつりと言う。
「はい」
わたしはじわじわと広がる水溜まりを眺めながら頷いた。
「…俺も最初は怖かった」
「――本当ですか?」
「今はもう慣れて、なにも感じない」
蒼は無表情だった。
それなのに、わたしにはその横顔がなぜか寂しそうに見えた。
