吸血鬼の眠る部屋

 


飲み屋の多い道に出ると、雨天だというのにそこは人だらけだった。


酔っ払ったおじさん、綺麗に着飾った女性、集団で笑い声を上げる若者たち。


そんな人々を誘い込むための、派手なネオンの看板と呼び込み。




「ひ…人が、多いですね」


慣れない場所に完全に圧倒されていた。


「大丈夫か? はぐれんなよ」


「は、はいっ」


とは言うものの、簡単に人波に流されそうで怖い。


わたしは必死で二人の背中にくっついて歩いた。


「――――いた」


だから蒼がそう呟いて足を止めたとき、その背中にぶつかりそうになってしまった。




「そんじゃー僕が行ってくるねー」


背の高いオレンジ色の頭が、アーケードの下にひょこひょこ歩いていく。


蒼は動かない。


わたしは蒼と一緒にその場に留まり、宵春の動向を見つめる。