吸血鬼の眠る部屋

 


翌日は雨だった。


「おはよ…」


ベッドの上で本を読んでいる美月に、小さな声で挨拶をしてみる。


ページを捲る細い指が微かに揺れたけれど、それ以上の反応はなかった。


イライラされるのも嫌だけど、無視されるのも辛い。




「ぐっもーにん!」


部屋を出たら、廊下にいた宵春に挨拶をされた。


ニコニコの笑顔を見ると、なんだかほっとする。


「今日、どうするか決めた?」


「あ、えーと…」


美月の冷えた瞳が脳裏に浮かぶ。


今は彼女と二人きりにはなりたくなかった。




「狩り、に…連れてってください」


「おっけおっけー。危ない目には合わせないから、安心してね」


大きな手がわたしの頭を撫でた。