吸血鬼の眠る部屋

 


「美月と違ってお前は純粋な吸血鬼だから、狩りを覚えたほうがいいとは思う」


蒼は短くなった煙草を銀色の灰皿に押し付け、立ち上がった。


「明日までに決めとけ」


そう言い残して、部屋に戻っていく。




――どうしよう?


狩りなんて行きたくはない。


人の命を奪うなんて卑劣で残虐な行為だと、そういう風に生きてきたし教わってきた。


けれど、わたしは人間ではなくて。


血の味を美味しいと思う化け物で。


吸血鬼として生きていくならば、せめて見張り役くらいは出来なければ――。




まとまらない思考を抱えながら、部屋に戻る。


美月はすでにベッドで眠っていた。


すうすうと寝息を立てる様は、本当に普通の女の子に見える。


彼女は人間である自分と吸血鬼である自分との間で、どう折り合いをつけているんだろう?