吸血鬼の眠る部屋

 


日が沈んだ後に起きて、顔を洗う。


部屋の掃除をして、シャワーを浴びて。


蒼がレンタルしてきたDVDを見たり、宵春にゲームを借りて遊んでみたり。


たまに美月が気紛れに作る料理を食べたり。


そして、グラス一杯の血液を飲んで、日が昇る前に眠る。




そんな風に過ぎていく毎日に少しずつ慣れてきた頃、蒼に「話がある」と言われた。


「えっと、…なんでしょう?」


カウンターのスツールに腰掛けた蒼は、煙草を吸っていた。


「明日、俺と宵春は狩りに行く」


「狩り?」


白い煙が立ち上っては消えていく様をぼんやりと眺めながら、訊ねた。


「人間を狩るんだ」


蒼は至極当然のように、さらりと答える。


そうだ、当然なんだ。


吸血鬼なんだから。


わたしもまた吸血鬼であるはずなのに、背筋がヒヤリと寒くなるのを感じた。




「お前はどうする?」


「どう――って?」


「狩りに行くか、行かないか」


吸い込まれるような黒い瞳が、わたしをじっと見つめる。