部屋にどっかりと置かれた巨大で平たい箱。
蒼と宵春はそれの荷ほどきを始めた。
わたしも手伝おうとしたが断られたので、部屋の入り口で見守ることに。
「――マスターはね、何でも屋さんなんだよ」
「え?」
作業中の宵春が、唐突に言う。
「なんでも売ってくれるし、なんでも買ってくれる。商売相手が吸血鬼でもね」
すごい人間でしょ? と宵春は笑った。
この荷物も、蒼がマスターから買ったものだという。
「……ほい、完成!」
「こんなもんか。中古だしな」
荷物を組み立てて完成したのは、ベッドだった。
ラベンダー色の塗装が所々剥がれた、古ぼけた木製のベッド。
「これ、わたしの…?」
「それ以外ないだろ」
「あの、――ありがとうございます」
「別に」
蒼は目を合わせないまま愛想のない声で言い、けれど微かに笑う。
宵春はそんな蒼の脇腹を肘で突っついて、チェシャ猫のようにニヤニヤしていた。
