「――――きろ」
夢に沈んでいたわたしの意識に、誰かの声が触れた。
「起きろ」
誰だろう?
日宇良さんよりも低い、硬い声。
水面に浮かんだボールのように意識がプカプカしていて、頭が回らない。
「――おい」
え、でも、どうして?
わたしの部屋に人が――?!
ハッと目が覚めた。
暗闇の中で、見慣れた天井が視界に入る。
「ゆめ……」
カーテンが風に吹かれてゆらゆらと揺れている。
窓の外には真ん丸い月が出ていた。
――日宇良さんが閉めたはずなのに、どうして窓が開いてるんだろう?
寝ぼけた頭のまま、ぼんやりと思う。
これも夢の中なんだろうか。
