吸血鬼の眠る部屋

 


翌日の夜は、これまでに感じたことのないくらいに体が軽かった。


どこも痛くないし苦しくない。


嬉しいような悲しいような、奇妙な感情に襲われる。




わたしはもう、自分を人間だとは思えない――。




部屋を出てリビングに行くと、宵春の大きな体がソファに寝転がっている。


ピコピコピコピコ。


携帯型のゲームで子供のように遊んでいる。


「あー。なんか顔色いいね」


「は、はい」


「蒼と美月はどっか行ったよ」


曖昧過ぎる表現に、わたしは思わず首を傾げた。


「なんか欲しい本があるって美月は言ってたけど。蒼はマスターのとこ」


「マスター…ですか?」


「うん、喫茶『シュエット』のマスター。ツルピカのナイスガイだよー」


つまり、喫茶店に行ったということだろうか?


こんな夜中に開いている喫茶店なんて、聞いたことがないけれど。