吸血鬼の眠る部屋

 


「ホントはこういう食事は吸血鬼に必要ないんだけどさ、料理は美月の趣味だから。ね?」


ソファに座って本を読んでいた美月に、宵春が顔を向ける。


彼女はチラリとこちらを見て、小さく頷いた。


「でもケチだから気が向いたときだけしか作ってくんないんだよなーあ」


「文句言うなら食べないで」


「あーごめんごめん、ウソだって!」




コンソメ味のオニオンスープ。


色んな野菜と豚肉を塩コショウで味付けしただけの、シンプルな炒め物。


瓶詰めにされたキュウリとパプリカのピクルスもあった。


――美味しい。


そう呟くと、「だよねー」と宵春が同意する。


美月は無言で本のページを捲っていた。




「でもやっぱさー、仲間が増えるとご飯も余計に美味しく感じるよ。な、蒼」


「お前さっきから喋ってばかりで食ってないだろ」


早々に食事を終えてインスタントコーヒーを飲んでいた蒼が、うんざりしたように息を吐く。


宵春のスープはもう冷えているようだった。