吸血鬼の眠る部屋

 


午前2時。


部屋でぼんやりと窓の外を眺めていたわたしを、美月が呼びに来る。


「ご飯の時間だから」


「ご飯?」


「そう」


美月の後についてリビングに向かう。


こんな風に声を掛けられたのは、ここに来て初めてのことだった。


それまでは、宵春が持ってきた菓子パンや惣菜パンを食べていたから。




スープの入った鍋と肉野菜炒め、それと炊飯器がカウンターに並べられていた。


蒼と宵春がスツールに腰を降ろして、すでに食事を始めている。


「はい」


美月に食器を渡される。


勝手によそって食べろと言うことらしい。


彼女は相変わらず無愛想だけれど、怒ってはいないようだ。


「これ、普通のご飯だよ。普通の――人間が食べるご飯。だから安心して」


躊躇っていたわたしに、宵春がそう言って笑いかける。


わたしは少し安堵して、空いているスツールに座った。