「まるで、なーに?」
耳元で声がして、夢から現実に引き戻される。
視線のすぐ傍に宵春の顔があった。
「寝言いってたよ。どんな夢見てたの?」
「えっと…」
怖い夢だった気がする。
でも、もうほとんど記憶には残っていなかった。
わたしはリビングのソファに寝かされていた。
窓の外の暗さや壁の時計から、日が沈んだばかりなのだとわかる。
「蒼から聞いたよ。血、飲んだってね」
「あ……」
そうだった。
刹那――あの出来事が生々しく思い返されて、思わず口を手で隠す。
「よかったー、心配してたから。これからどんどん体調良くなるよ」
そういえば、いつもより呼吸が楽だ。
…血を飲んだからだとは思いたくないけれど。
