吸血鬼の眠る部屋

 


《覗いてごらんよ》


果てのない青空の下、広い草原で不思議な声が響いている。


《わたしを覗いてごらんよ》


太陽の光が反射してキラキラと輝く湖。


その水面から声が聞こえてくる。


《さあ――》




声が促すままに湖を覗き込む。


いつもと変わりないわたしの顔が、波のない水面に映った。


《ほら、本当の姿が見えるだろう》


ピキピキピキッ。


顔の表面にヒビが入る。


恐ろしくて手のひらで顔を覆ったけれど、皮膚が割れた陶器のようにパラパラと剥がれ落ちていく。


《ああ、醜いねえ》


再び鏡のような水面を見て、わたしは声にならない悲鳴を上げた。




ギラギラと光る深紅の瞳。


獣のような鋭い牙。


これは、この姿はまるで――――。