吸血鬼の眠る部屋

 


蒼はわたしにのし掛かったまま、戸棚の扉を開ける。


そこからガタガタと取り出したのは、血の入った瓶だった。


「の、飲みたくない…」


目にするのも嫌だった。


あの蕩けるように甘い味を思い出してしまうから。


「お前の意見なんか聞いてない」


そう言って、蒼は瓶の中の液体を一口含む。


その赤く濡れた唇が、わたしの上に降りてきた。




「んん――!」


唇と唇が重なる。


驚いて引いた顎を指で掴まれて、口の中に温かい舌が侵入して。


その瞬間、甘い味が広がった。


「ふ……」


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!


飲み込みたくなくて吐き出してしまいたいのに、蒼はそれを許してくれない。


薄く開かれた瞳、蠢く舌が、早く『それ』を飲めとわたしに言っている。