吸血鬼の眠る部屋

 


――気づくと、広い草原の真ん中に立っていた。


強く明るい太陽の光がわたしを照らしている。


緑の匂いを含んだゆるやかな風が、わたしの白いワンピースの裾を揺らした。


「わあ……」


ザワザワと草が揺れるたび、反射した光がキラキラと舞う。


なんて綺麗な場所なんだろう!


そう思った瞬間に、これは夢だと気づいた。




いつも見ている夢だ。


もしかしたら幼い頃の記憶なのかも知れないけれど。


「こんな場所、来れるわけないもんね……」


部屋から出ることすらままならないんだから。




急に寂しい気持ちになる。


太陽の下でひとりぼっちなんて、酷い罰ゲームだ。


「…誰かいないかな」


草の上にしゃがみこんで、自分の影を見つめる。


じわじわと目頭が熱くなってきて、溢れそうになった涙を手の甲で拭った。




ここは寂しい。


誰か。


誰か、わたしをここから連れ出して――!