吸血鬼の眠る部屋

 


生温い液体が口の中に流れ込む。


「んぅ……っ」


『これ』が何かを必死で頭から追い出そうと、目を閉じたのに。


ぬるぬると舌にまとわりついた感触に耐えきれず、ごほっと口から吐き出してしまった。


ゲホッゲホッと咳き込むたび、毛布が血液に濡れて染みる。




「大丈夫?」


目を丸くして慌てた宵春が、わたしの背中を撫でる。


「…今日は無理そうだな」


蒼は浅く息を吐いて、わたしから毛布を引き剥がした。


そしてクローゼットを漁り、違う色の毛布を寄越す。


「困ったねえ。舌も人間の味覚に近くなっちゃってるのかな?」


宵春が難しそうな顔をする。




わたしは自分が信じられなかった。


暗い赤色のそれ、よく鉄のような味だと言われる血を口に含んだ時。


確かに、甘く感じたのだ――。