吸血鬼の眠る部屋

 


「わたし、吸血鬼なんかじゃ――」


「黙れ」


蒼が強い口調で低く命令した。


わたしはぐっと口をつぐんだけれど、情けなくて泣きたくなる。




はあ。


蒼が酷く面倒そうに溜め息を吐く。


「お前の言いたいことはわかるけどな、とりあえず黙って聞け」


蒼は覚えの悪い生徒に諭す教師のようなトーンで喋りだした。


「血を飲まなくても吸血鬼は死なない。餓えを感じることもない。ただ弱る」


「……」


「息が苦しい、歩くのが苦しい、食べるのが苦しい、生きてることが苦しい。何もかもが苦しくなる」


彼の長い指がコンコンと床を弾く。


「でも死ぬことはできない。苦しみながら何もできずに生きる続けるだけだ」


その背後では宵春が頷いている。




「お前はそういう状態なんだよ。人間としての生活が、吸血鬼のお前を苦しめる。永遠に」


「永遠……」


吸血鬼に寿命はないしね、と宵春が笑って言う。


ぞっとする話だ。