吸血鬼の眠る部屋

 


いつの間にか眠っていたらしい。


「――ちょっと」


美月の声ではっと目が覚めた。


「そろそろ起きなさいよ」


見慣れない天井と美月の顔を交互に眺めて、やはりあれは現実だったんだと実感する。


「――――」


美月はわたしの顔を見つめて、訝しげに眉を潜めた。


そしてわたしに背中を向け、部屋を出ていく。




「おい、入るぞ」


美月がいなくなってすぐ、ドアが開いて蒼と宵春が入ってきた。


「美月がね、君の顔色が悪いって言うからさ」


「どんな感じなんだ?」


ミノムシみたいに毛布を体に巻きつけているわたしの傍に、二人がしゃがみ込んだ。


「なんでもない…です」


嘘を吐いた。


本当は寒くて、頭が痛くて、吐き気がする。




「――ねえ、咲夜子。君、子供の頃からずっと体が弱いんでしょ?」


なんでそんなことを聞くんだろう?


疑問に思いながらも、優しい目をした宵春に頷いてみせる。


「あーやっぱり。そうだと思った。長い間しんどかったね」


宵春は大きな手でわたしの前髪をサラリと払い、額を撫でた。


手のひらの温度が心地いい。