吸血鬼の眠る部屋

 


この可笑しな状況は、ほとんど誘拐じみているように思う。


それなのになぜかこの人たちからは悪意を感じなくて、不思議なのだけど。


「待ってください。あの。わたし……」


立ち上がって走って逃げ出せればいいのだけれど、わたしにそんな体力はない。


ソファの上で必死に息を吸い込み、できるだけ大きく声を出す。


「わたし、帰りたいです。帰らせてください」




宵春が困ったように眉尻を下げ、美月が呆れたように溜め息を吐き、蒼は眉間にシワを作った。


「どこに帰るって?」


氷のように冷えきった声で、蒼が言う。


美しい顔が残酷さを表層に滲ませて、わたしは思わず身震いした。


「家に帰らせてください。きっと日宇良さんが心配して――」


「人間のとこに帰るのか? 吸血鬼のくせに?」


「わたしは人間です……っ」


「違う」


蒼はわたしの言葉を即座に否定して、鼻で嘲笑う。




「お前は吸血鬼だ。匂いでわかる」