そこには、オレンジ色の髪の男が立っていた。
すごく背が高いのに顔立ちは幼くて、少年と青年の狭間にいるような印象の人だ。
彼は文句を言いかけたまま、ぽかんと口を開けてわたしを見つめる。
「……え、どうしたのその娘」
「見つけた」
「ふえ~、ぼっち吸血鬼? めっずらしーい」
オレンジ頭の人はニッコリと愛想よく笑って、わたしの顔を覗き込んだ。
「僕、宵春(よいはる)っていうんだ。よろしくー」
「え、あ、咲夜子…です」
何が『よろしく』なのかわからないけれど、挨拶されたらこちらも返すしかない。
「とりあえず入って入って。あ、こいつちゃんと自己紹介した?」
『こいつ』と青年を指差すから、わたしは小さく首を横に振った。
宵春さんは大げさに溜め息を吐く。
「お前なー、せめて名乗るくらいしろよ。知らない男に抱っこされる女の子の気持ちも考えろって」
「……」
「説明とか全然してないんだろ。ほんっと信じらんない。デリカシーって言葉知ってる?」
「…うるさい」
狭い玄関を潜って廊下を歩く間、宵春さんからの言葉に青年は面倒そうに表情を歪めていた。
ていうか、いつまでお姫様抱っこしてるんだろう…。
