吸血鬼の眠る部屋

 


ここはどこだろう?


古ぼけた街灯がチカチカと点滅している、暗い夜道。


目の前にはやはり古そうなアパートが建っている。


二階建ての鉄筋コンクリートで、元は白かったのだろう灰色の壁にはヒビが見えた。




青年はわたしを抱えたまま、迷わずそのアパートに足を踏み入れる。


塗装が剥がれて錆びが剥き出しになっている鉄の階段を上る。


「お、降ろして」


「抱えてったほうが早い」


わたしの訴えはすぐさま却下された。


重くないんだろうか?


少し心配になる。




二階の突き当たりのドアの前で立ち止まると、青年はドアを足で蹴りだした。


ガンッガンッガンッ。


驚いて唖然としていると、ドアの向こうからバタバタと走ってくる足音が聞こえた。


そして、響く声。


「蒼(あお)! うるさいから止めろって――」


ドアが開かれる。