吸血鬼の眠る部屋

 


ぎゅうっと目を瞑った時、額にふわりと温かな感触が降ってきた。


青年の吐息が直接感じ取れる。


――わたしは額にキスを落とされていた。


「…………っ」


軽く柔らかい、怯える子供をあやすようなキスだ。


けれどこんなふうに他人にキスされるのは初めてで、心臓がひっくり返りそう。


顔がどんどん熱くなっていくのがわかる。




「や、やめ…て」


なんとか拒絶の言葉を絞り出す。


すると、やっとわたしの額から青年の唇が離された。


「…ここだ」


「え?」


トンッと小気味いい音を立て、青年の足が地面に着地する。


「落下は慣れるまでキツイからな」


だから、感じさせないためにキスをしたんだろうか。




わたしは額に指で触れた。


まだ熱が残っているような気がした。