吸血鬼の眠る部屋

 


――苦しい。


息が苦しい。




清潔な白いベッドの上。


わたしは白い天井を見上げて、ただ呼吸を繰り返している。


部屋の中は暖かいのに死んだように静かで、自分の浅い息が酷く耳障りだ。


窓の外は暗い。




――不意に部屋のドアが外からノックされた。


「まだ起きてたんだね、咲夜子(さよこ)」


銀縁の眼鏡をかけた中年の男性が部屋に入ってくる。


日宇良(ひうら)さんだ。


「もう寝る時間だよ」


日宇良さんは柔らかく微笑んで、わたしの顔を覗き込む。


「ちゃんと夜寝て朝起きないと、体に悪いからね」


「……はい」


日宇良さんは窓の鍵を確認してから、クリーム色の厚いカーテンを閉めた。


「おやすみ、咲夜子」


「おやすみなさい、日宇良さん」


電気が消されて、日宇良さんの姿がドアの向こうに消える。