私の目の前には、当たり前のようだった奏君の大きな背中がある。 変わらないで欲しいと願ったこの世界。 私は壊すことを分かっていて、言う。 「奏君、冬休みに東京に行くの?」 そのたった一言で、周りの空気が張り詰める。 自転車を止めて私を振り返った奏君の目は、悲しそうな瞳が揺れていた。