ボールを追いかけた夏

──ガラガラ

「おっ、おかえりー。あ、母さんも一緒?」

「うん、さっきそこで会って.......」

「そっか」

ベッドの横の机に花瓶を置く。

「じゃあ、彩乃ちゃんはもう帰っていいわよ。また、明日来てちょうだい」

「あ、分かりました。じゃあね。練」

「おう!じゃなー!」

元気よく、大きく手を振る練。彩乃は小さく手を振り病室を出た。

「あんなに元気なのに.......」

おばさんから告げられた事実。本当は一番辛いのは練なのに.......。

《あの子ね.......白血病なのよ》