ボールを追いかけた夏

受付の人に教えてもらった通りにエレベーターに乗り六階のボタンを押す。

ていうか、錬六階の病室か......。そこそこ広い病室なんじゃないの?

六階に着くと右に曲がる。すぐに625室は見えてきた。


──コンコン


「どうぞー」

中から錬の声がした。本当に入院してるんだ......。

ドアをガラッと開け、中に入る。

「やっほー」

「あ、彩乃ー。来てくれたのか?」

「当たり前でしょ。ったく錬が入院なんて一体何が......」

「そんなに重い病気じゃねーから大丈夫。少し風邪こじらせただけだし」

「......嘘はつかないでよ」

「本当だって」

錬が笑いながら答える。でもその笑いにも少し寂しさが見えた。

「......じゃあ彩乃、お花に水くんでくる」

「はーい」

ガラッとドアを開け中から出る。その瞬間少し涙が出てきた。

「......もし、錬がこの世からいなくなったら......」

縁起でもってないことを口に出してしまう。 

涙を拭いながら手洗い場へ走っていった。