そのときだった。

 「奈留!!」

 私がそっちを見ると、小さい男の子が

 道路の方に向かって走ってるのが見えた。

 お母さん…かな?

 女の人が男の子を追いかけている。

 あのままだったら…。

 「海斗、ちょっとゴメン」

 「え、おい春奈!」

 海斗の声がしたけど、私は止まらなかった。

 あの男の子を止めないと。

 私は、後のことを考えずに走り出したんだ。

 「君…奈留くん!ちょっと待って!」

 「捕まえた」

 私は、奈留くんを捕まえると歩道に向かって

 歩き出した。

 奈留くんは、 5歳くらいの男の子だった。

 「もー、奈留くん!

  お母さんを心配させたらダメでしょ」

 少しだけ、キツく言ってみた。

 「春奈!」

 海斗の叫び声がした。

 どうしたんだろう?

 私が海斗を見ようとした次の瞬間。

      ーードンッーー

 体が、何かにぶつかった音がした。

 私は宙に浮いていて……。

 あぁ。私、死ぬのかな?

 私が最後に思ったこと……それは……

    ーー海斗のことだったーー