《結婚》



ふと移した視線の先に見覚えのある封筒が見え、慌てて手に取ると玄関へと急ぐ。



「…蓮!忘れ物っ」



今まさに出ようとしていた蓮を見つけてホッと息をつき、手にした封筒を左右に振ってみせる。



すると一瞬動きを止めると、バツが悪そうに頭を掻いた。



「悪い、助かった」



受け取った封筒を鞄に押し込めると、私の腰に腕を回しそっとキスを落とす。



…本当、行ってきますのキスが好きなんだなぁ。



毎度毎度、何があっても落とされるキスに今では日常となりすぎて慣れてしまった。



「ん、気をつけてね」



「あぁ…やっぱり、送り出してもらえるのはいいな」



ふっと惚けるような微笑みを残して、仕事へと向かった蓮。



私はというと、暫し顔を真っ赤に染めてその場に立ち尽くしていた。