朝焼けの空を背に少女は1人誰もいない学校にいた。
ここ若葉ノ宮高校は部活に力をいれ、運動部が全国クラスなことで有名だ。
そのため毎朝、朝練というものがある。
しかし今日は全ての部活が朝練禁止とされている。
少女は少し上機嫌で正面玄関を通り抜け、4階の北側に位置する音楽室へと向かった。
時刻は7時30分過ぎ…一般生徒は早くとも8時に登校してくる。
『30分もあれば好きなだけピアノを楽しめる…』
つい独り言を洩らしては音楽室の扉に設置されたカードキー式のカギを解除する。
中に入ると後ろ手で扉をしめ、部屋の真ん中にぽつりと置かれたグランドピアノに向かった。
椅子に座り鍵盤に触れては一呼吸置き、適当に弾き始めた。
好きな曲を自分でアレンジしたものを弾いてみては満足げに笑みを溢し、それはそれは楽しそうだった。
しかし曲の途中で手を止め、少女は鍵盤から指を離しため息をついた。
『……やっぱり、貴方は越えられない』
そう呟いては朝焼けの空に照らされた校庭を見つめた。
霧島 紫苑(キリシマ シオン)
若葉ノ宮高校2年生
残酷な運命を背負う者
