『学年1の秀才がこんなとこでなにやってんの？』

屋上に設置されたベンチにて眠る紫苑の元に『一条 幽吾(イチジョウ ユウゴ)』が現れた。
藍色の髪が風に靡き、前髪を鬱陶しそうにかきあげると紫苑を抱き起こした。
彼は紫苑の幼なじみであり、恋人でもある。
『…幽吾……今、何時？』
『11時過ぎ…ちょうど3時限目じゃないかな？』
そう幽吾は紫苑の隣に腰かける。
『…気分が優れないから帰るわ』
そう紫苑は立ち上がると、ベンチに立て掛けた鞄を手に屋上を後にした。

下駄箱に降りると見知った生徒が困ったようにうろうろしていた。
『なにをしているの、篠宮くん』
腕を抱えては相手に声をかけるとビクッと肩を上げては、雀は恐る恐る振り返った。
『き…霧島さん……』
雀はどこか安心したような顔つきで紫苑に駆け寄った。
『あの……職員室を探してて…』
雀は恥ずかしそうに顔を伏せてはぼそぼそと話す。
『は？』
紫苑が呆れたような目で彼を見ていると雀は慌てていろいろ言い訳を述べるが、どれも紫苑に対しては無意味であった。
『そこの階段上がってすぐ右の部屋』
紫苑はそう言うとローファーに履き替えた。
『ありがとう……観月さん、帰るの？』
雀は上履きに履き替えながら紫苑の行動を見ては尋ねる。
『気分が優れないの……先生に言っておいてもらえる？』
そう紫苑は少し上目遣いで雀に頼む。
その行動に雀が頬を染めたことや、あっさりOKしたことも言うまでもない。